日本容器包装リサイクル協会ニュース No.69
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容リ協ニュースNo.69 May 201512福岡県北九州市面積:492km2人口:約96万人環境ミュージアム 外観 環境ミュージアムで説明する中薗さん(左から2人目)リサイクル探訪 北九州市編 「北九州市は、日本初の本格的な近代溶鉱炉を備えた官営八幡製鉄所の創業地であり、戦前から工業地帯として栄えてきました。戦後も、四大工業地帯の一つとして日本の高度成長を支えてきましたが、1960年代に入り深刻な公害問題を抱えることになります」と話すのは、市民のための環境学習・交流総合拠点施設として2002年に開設された環境ミュージアムの館長、中薗哲さんです。 この公害問題に対し、最初に声を上げたのは、子どもの健康を心配した母親たちでした。自発的に大気汚染の状況を調査し、企業や行政に改善を求める運動を起こしたのです。それを受けて、企業は生産工程や設備を改善、行政も対策組織を立ち上げるとともに洞海湾の海底の土砂をさらう大規模な工事を実施しました。市民と行政、企業がそれぞれの立場を尊重しつつ一体となって取り組んだ結果、かつて死の海といわれた洞海湾を100種類以上の魚介類が生息する美しい海へと再生させ、工場の煙により日本一の煤じんを記録した灰色の空を元の美しい青空へとよみがえらせることに成功します。 「北九州市のこうした公害克服に対する取り組みが評価されて、1990年にグローバル500、1992年に国連地方自治体表彰、と立て続けに国際的な受賞を果たしました」(中薗哲さん)。グローバル500とは、国連環境計画(UNEP)が環境保護及び改善に功績のあった個人または団体を表彰するもので、日本の自治体では初めての受賞でした。一方、国連地方自治体表彰は、ブラジルのリオデジャネイロで開催された地球サミットにて、持続可能な開発、環境保全に貢献してきた12都市に贈られた賞で、北九州市は日本の自治体で唯一選ばれたのです。 「名誉ある賞を受賞したことで、市民の環境意識は一段と高まりました。あわせて、収集したごみをリサイクルしなくて良いのかという声が、市民の間から上がり始めたのです」と中薗さん。それまで北九州市では、市民の排出したごみは100%焼却処理を行なっていたのですが、容器包装リサイクル法の施行前に当たる1993年から、缶とびんの分別収集を開始。その後、容リ法の施行に伴って1997年にPETボトル、2006年にはプラスチック製容器包装の分別回収もスタートさせるなど、リサイクルへの取り組みを加速度的に推進していくことになるのです。環境関連の世界的な賞を契機にリサイクルを推進1960年代に発生した公害問題に対し、市民と行政、事業者で成し遂げた環境改善への試みが、国際的にも高く評価されている北九州市。現在、その成功体験は、分別・リサイクル事業に対し、好影響をもたらしています。同市の家庭ごみの処理政策についてその取り組みをレポートします。市民と行政、事業者による三位一体で目指すは持続可能な環境モデル都市

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