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平成19年度 欧州のプラスチック製容器包装リサイクル

平成19年度 欧州のプラスチック製容器包装リサイクル

プラスチック容器事業部では、平成19年6月末から7月初めにかけて、欧州のプラスチック製容器包装リサイクルの状況と今後の方向性を探ることを目的に現地調査を実施しました。法改正論議等でも様々な課題が明らかとなり、再商品化の実務を担当する立場にある私たちが、日本の状況を念頭におきつつ、今後のプラスチック製容器包装リサイクルのあり方を考える上で役立つ情報を得ようとしたものです。主な調査結果について報告します。

調査結果概要

1. 現地調査

訪問国はドイツ、ベルギー(EU委員会)、フランスで、政府関係機関・自治体や協会と同様の機能をもつ会社・組織、プラスチック・リサイクル団体およびNGOなど、今回は再生処理現場ではなく政策や全体の運営に携わる団体を訪問しました。

写真:欧州の調査にあたったメンバー欧州の調査にあたったメンバー。
協会のプラスチック容器事業部、プラスチック容器包装リサイクル推進協議会、(社)プラスチック処理促進協会より参加。ドイツ、エコ研究所にて。

2. 対象となる容器包装プラスチック

まず、日本と大きく異なる点は、各国ともPETボトルがプラスチック容器に分類されていることです。また、スーパーなどの小売店も視察したところ、シャンプーなどの詰め替え容器はほとんど見られず、ポリエチレンなどのボトル類が多いことも特徴です。以上2つのことから、ボトル類は容器包装プラスチックの約 40%を占めるといいます。よって、フランスやベルギーではEUのリサイクル目標値(22.5%)を自国の目標とし、ボトルのみを回収対象にしていますが、リサイクル率はすでに21%であるとしています。

各国のプラスチック製容器包装リサイクル・システム比較概要

  日本イラスト:日本国旗 ドイツイラスト:ドイツ国旗 フランスイラスト:フランス国旗
リサイクル対象 PETボトルとは別分別のプラ容器包装 プラ容器包装 全部(PETボトル含む) ボトル(PET,PE)のみ
リサイクル率目標値 なし 60%(エネルギー含む全手法による)36%(メカニカルR) EU指令に従う60%(エネルギー含む)22.5%(リサイクル)
リサイクル率実績※ 約50% 約97%(エネルギー含む)約50%(メカニカルR) 21%(リサイクル)
PRO(責任組織) 容リ協会(財団法人)のみ DSD+他3社(会社) エコアンバラージュ+他1社(会社)
PROの責任範囲 リサイクル 回収、リサイクル リサイクル(ただし、実施主体の自治体を支援)
資金 原資 中身メーカー、容器メーカー、小売業等 Grune Punktを得たメーカー Gマークを得たメーカー
拠出先 リサイクル事業者 回収、分別、リサイクル事業者 自治体(リサイクル経費の約54%)
リサイクル手法の決定方法 材料リサイクル優先を含む入札選定により再商品化手法が決まる 分別後、購入してくれる事業者により手法が決まる ボトルのみ対象であり全て材料リサイクル事業者が購入
  • ※日本:(協会引取量/総排出見込み量)(2005)。ドイツ:DSDデータ(2003)に基づいたもの。ただし、分母は排出量そのものではなく「Grune Punkt」を付されたものの量であり、単純比較はできません。フランス:エコアンバラージュからヒアリング(2006)。

3. ドイツのリサイクル

ドイツでは、容器包装プラスチックの60%を何らかのリサイクルをすること、そのうちの60%(全体の36%)をメカニカル・リサイクル(日本の材料リサイクル)とすることが目標になっています。
まず、DSD(日本の協会と似た機能を持つ組織。ただし、企業)などが家庭から缶、紙、プラスチック製容器包装を黄色の容器で収集します。次に、ソーティング・センター(選別処理施設)で素材別に、さらにプラスチックは材質別に選別され、その品質に応じて行き先が決まり、その結果リサイクル手法の比率が決まることになります。
DSDが容器廃棄物の選別処理に利用するソーティング・センターはドイツ全土に約170か所あり、そのほとんどが民間の運営によるものといわれ、各々で採算性を高める努力が払われています。缶や紙は当然、販売しますが、プラスチックも単一材質に選別した素材はメカニカル・リサイクル業者に販売でき、次によいものは鉄鋼会社などのフィードストック・リサイクル(日本のケミカル・リサイクル)へ、そして汚れていたり、混合物として品質が劣るものはエネルギー・リカバリー(日本の固形燃料化等)に回されます。収益を上げようとする結果、より高く売れるメカニカル・リサイクルに行く比率が約50%と高くなっています。日本の「材料リサイクル手法優先」のもとで、落札結果によって再商品化手法の比率が決まってしまうしくみとは大きく異なります。

リサイクル・リカバリー等の用語定義 日独比較

日本イラスト:日本国旗 <具体例> ドイツイラスト:ドイツ国旗
リサイクル 材料リサイクル 同じ材料としての再利用 メカニカル・リサイクル リサイクル(マテリアル・リサイクル) リカバリー
ケミカル・リサイクル 高炉還元剤利用
ガス化
油化
フィードストック・リサイクル
サーマル・リサイクル RDF、RPF燃料代替 エネルギー・リカバリー
処分 焼却 廃棄物焼却施設での焼却 焼却 処分
埋立 埋立地への最終処分 埋立

4. リサイクルと経済性

EU委員会は、現在のリサイクル目標値を当面、高くすることはないと言明しました。これ以上目標値を上げることが環境によいという結論は得られていないとも言っています。さらに、経済と環境とのバランスについての質問に対しても、「市場原理で自ずと決まることがよい」との返答がありました。
次に訪問したEUROPENは、政策提言などで有力なNGOです。こうしたEUの姿勢について見解を求めたところ、最近のEU容器リサイクル政策は経済と環境とのバランスは、経済の方にウェイトが置かれていること、この基本にはEUの国際競争力を高めようとする「リスボン戦略」*が背景にあることを指摘しました。フランスやベルギーもこれ以上のリサイクルを考えることには消極的で、現状の目標や取り組みが、環境と経済の両立のために最適との見解でした。
特にドイツでは容器リサイクル開始当時は政府の保護の下、DSDが1社独占で運営してきましたが、90年代半ばから経済性が問われるようになり(例:先述したソーティング・センターの採算性向上努力)、ついには、DSDの独占を開放するところまできており、リサイクル業界の市場競争が急激に進展しようとしています。

5. 容器包装プラスチック 再商品化の今後

日本では、リサイクルがしづらいその他プラスチックをPETボトルとは別の分類として市民に分別排出をお願いしてリサイクルし、リサイクル率も約50%までに至っています。この点においては、関係者の協働による取り組みが、EU各国よりも真剣に行われているといえるのではないでしょうか。しかし、日本では、現在は保管施設ごとに入札選定して、再生処理事業者が決定されており、どの再商品化手法とするかについて、収集物の品質とは関係がありません。一方、ドイツではソーティング・センターで素材別およびプラスチックは材質別に選別し、その後再生原料の材質・品質により再商品化手法を選択しています。対象となる容器包装プラスチックの中身や関係者の役割分担が異なるため、まったく同じ仕組みを日本で実現できるものではないでしょう。しかし、単一素材の材料リサイクルを目指す取り組みや、汚れたものはエネルギー・リカバリーに回すことなど、日本でも日本流に修正して取り入れるべき点があるのではないでしょうか。

  • *「リスボン戦略(Lisbon Strategy)」とは、2000(平成12)年3月に、ポルトガルの首都リスボンで開催された欧州連合(EU)首脳会議で採択された、2010(平成22)年をターゲットとする長期的な経済・社会改革戦略であり、経済政策と貧困克服・完全雇用実現のための社会・雇用政策などからなる広範な戦略。EUの競争力強化策としての意味も持っており、現在でも、2010年をターゲットとしたEUの最重要戦略と位置づけられている。

調査結果

「欧州(EU、ドイツ、ベルギー、フランス)におけるプラスチック製容器包装リサイクル状況調査 報告書(概要版)」 pdfファイル55KB
「欧州(EU、ドイツ、ベルギー、フランス)におけるプラスチック製容器包装リサイクル状況調査 報告書(本編) 」 pdfファイル282KB

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