日本容器包装リサイクル協会ニュース No.48 The Japan Containers and Packaging Recycling Association
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特集 リサイクルのゆくえ―再商品化の高度化に向けて
容器包装リサイクルの現在、そしてこの先を探る
容器包装リサイクル法(以下、容リ法)が制定され、すでに15年が経とうとしています。
長年にわたり容リ法に関わってこられた石川雅紀・神戸大学大学院教授に忌憚なく語っていただくことで、
容器包装リサイクルシステムのあるべき未来を探りました。

いしかわ まさのぶ
石川 雅紀
神戸大学大学院経済学研究科教授。日本におけるLCA研究の草分け的存在であり、協会では設立以来評議員を務める。産官学民の連携で無理なくごみを減らせる社会づくりを目指すNPO法人「ごみじゃぱん」代表。

こまたに すすむ
聞き手 駒谷 進
(財)日本容器包装リサイクル協会(以下、協会)理事。企画調査部長、広報部長を兼務。前職はビール会社・社会環境部長。平成17年より現職。

(平成22年1月、神戸大学にて)
きっかけは、牛乳パックリサイクルの総合的評価から
駒谷 まずは、石川先生が容リ法や協会に関わるようになられた経緯からお聞かせください。私は5年前に当協会に来て現職に就きましたが、その前は、ビール会社で企業側の立場から容リ法制定当初より容器包装リサイクルに関わってきました。石川先生とは、その後、企業の環境経営の指標づくりにご協力いただいて以来のおつきあいです。企業が社会に提供する商品のライフサイクル環境負荷と、その企業が社会に提供するトータルの付加価値について、侃々諤々の議論を交したことが今でも鮮明に思い出されます。
石川 そうでした。懐かしいですね。私と容リ法との関わりは、法律が検討されている時期に、審議会の中からではなく外部から環境の専門家としての意見を発信したことから始まっています。
駒谷 石川先生は、国が容リ法の審議を始める以前から、容器包装のごみ問題について研究されていたとお聞きしています。
石川 はい。1980年代の末頃から、東京水産大学(現・東京海洋大学)の食品工学科で、容器包装のごみ問題の研究に取り組み始めました。
 研究を進めるうちに、あるシンクタンクの関係者から牛乳パックのリサイクルについて総合的に評価してみないかという依頼がきました。そこで、私は5〜6人の研究仲間とともにリサイクル時の手間やコスト、CO2やNOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)といった有害物質の排出量などをそれぞれ算出し、リサイクルするメリットを総合的に評価したレポートを作成しました。それが、日本におけるLCA(ライフサイクルアセスメント)の最初の仕事という評価をいただいたことで、その後にLCAという手法が普及し始めるとともに、国や企業など各方面から同様の依頼が舞い込むようになってきました。
駒谷 LCAの仕事を通じて得た経験から、容リ法づくりに対してさまざまな提言をされたというわけですね。
石川 仕事を続けるうちに、気がついたらLCAの専門家的な存在として世間から認知されるようになり、国内外のリサイクル関連の情報が自然に私のもとに集まってくるようになったのです。さらに、環境省や農水省の依頼で、ヨーロッパにも頻繁に情報収集に出かけ、環境政策に携わっている研究者、スタッフたちとのネットワークを築くこともできました。また産業界、とりわけ食品産業ですが、企業側の論理というものもわかるようになりました。そうした経験を通じて、リサイクルとはどういうものか、どういった制度があるのかなど、そのときに勉強させていただいたことを、いろいろなところで情報発信してきた次第です。
 協会との関わりでいうと、設立当初から評議員を務めさせていただいています。平成19年に協会が立ち上げた「プラスチック製容器包装再商品化手法に関する環境負荷等検討委員会」<No.39:今日もリサイクル日和>では、委員長としてプラスチック製容器包装の各再商品化手法における環境負荷削減効果を評価するLCAに取り組みました。
環境負荷等検討委員会のセミナーで評価検討結果を報告(平成19年10月)
キーワードは「自主的アプローチ」
駒谷 容リ法の制定後、改正を経て今年で15年。現在の容器包装リサイクルの状況についてどのように評価されていますか。
石川 個々に細かな課題はあるものの、全体としては問題なく回っているのではないでしょうか。ただ、プラスチック製容器包装の再商品化手法として、これまでのように材料リサイクルを優先する理由はもうないのではないかと、私自身は考えています。というのも、先ほどお話ししました「環境負荷等検討委員会」で、容リ法に基づき実施されている再商品化手法それぞれのエネルギー資源消費量、CO2・NOx・SOx排出量を算出した結果、材料リサイクル手法が特段優れているとはいえないこと、手法ごとに節約できる天然資源が異なるという事実が明らかになっています。
 そのため、特に複合素材を使ったものに関してはケミカルリサイクルをもっと活用すべきで、私自身は単純にセメントを参入させればコストは下がるし、最も合理的なリサイクルが行なえると考えています。セメントなら、熱回収率も高く、いろいろなものが入っていても無理なく処理できるでしょうから。
駒谷 これから改正容リ法の見直し論議が始まりますが、プラスチック製容器包装の再商品化手法における材料リサイクル優先をどうするかという問題は、審議会において話し合われる議題のひとつになると思われます。
 また、容器包装以外のプラスチックのリサイクルのあり方も課題のひとつに挙げられています。
石川 ただ、改正容リ法の見直し論議の場には容器包装の事業者しかいませんから、容器包装以外のプラスチックとなると結論は出せないと思います。新たにプラスチックを利用するすべての業界が参加できる場が必要になってくるでしょう。加えて、本気で取り組む人がいないとできませんね。
駒谷 それから、私は石川先生がおっしゃる「自主的アプローチ」というリサイクルシステム構築の手段が、今後の見直し論議の中でとても重要な視点をもたらしてくれるような気が個人的にしています。
石川 「自主的アプローチ」とは、法的規制を超えた当事者間の合意・協定などにより環境性能を向上させようとする取り組みのことです。
 わが国の容器包装に関する「自主的アプローチ」は、これまであまり注目されていませんでしたが、際立った成功例があります。それは、スチール缶やアルミ缶のリサイクルです。強制的なデポジット制度によらず、自主的な取り組みによって、今やスチール缶は88.5%、アルミ缶は87.3%と、世界に類を見ないトップクラスの高さのリサイクル率を達成し、結果として容リ法の成立以降も再商品化義務を免れているという事実、これをみるに、「自主的アプローチ」を促すことは最適なリサイクルシステムを構築する手段としてかなり有効なのではと考えています。
駒谷 スチール缶、アルミ缶については、業界挙げての長年の取り組みによって、高いレベルのリサイクル率を達成していますが、ここに至るまでは、市町村収集や集団回収のしくみと連携・協働してきた業界の努力の結果といえますね。つまり、企業への規制強化だけが、優れたリサイクルシステムを構築可能にするわけではないということですね。
石川 はい、その通りです。平成16年から18年にかけて行なわれた改正論議の際には、EPR(Extended Producer Responsibility:拡大生産者責任)を目的視するEPR原理主義とでもいうべき立場と、目的達成の手段と考える立場に分かれました。私は後者の立場です。少なくとも経済学ではEPRを目的として絶対視する考え方、理論はありません。
 EPRが手段として有効に働くには条件が必要です。一つは、DfE(Design for Environment:環境配慮設計)が有効に働くことです。家電製品では、分解しやすく設計することが再資源化工程を効率化しますから、自社だけでなく社会的費用削減につながることが期待できます。容器包装の場合には委託料金を減らす目的での軽量化は進みますが、社会的費用の大きな部分を占める収集・選別保管の工程を市町村が行なっていますから、単位量当たりの費用削減という意味での効率化は期待できません。また、軽量化も商品保護、販売棚で商品を目立たせるというマーケティング目的とトレードオフとなるため、現状では限界があります。
 EPR原理主義者の主張のように収集・選別保管工程の費用の全部または一部を事業者に単純に負担させると、むしろこの工程での効率化のインセンティブをそいでしまうことが危惧されます。
 容器包装リサイクルの問題に関しては、EPRをより強力に適用すれば解決できるとするのはあまりにも単純過ぎる考え方だと思います。問題解決のためには、無意識を意識化し、生活者に問題を気づかせ、協働するしくみをつくることと、市町村が担うであろう収集・選別保管工程を効率化する新たなしくみが必要です。
 市町村、事業者、NPOなどの関係者が協働する自主的アプローチは、これらのしくみをつくりだしてゆくために最も有効なアプローチだと思います。
『行動が意識を変える』「ごみじゃぱん」の成果
駒谷 容リ法が抱える課題として、ごみの発生を抑制(=リデュース)できていないという声があります。その点については、いかがですか。
石川 国の発表する容器包装ごみの年間排出総量データを見る限り、そうした指摘は間違っていないと思います。ただ、個別の企業の事例として「こんなに軽量化しました」という話はよく耳にします。それなのに、年間の排出総量は横ばい状態というのはどういうことなのでしょう。
駒谷 商品の販売量は増えているのに容器包装の量は増えていないというのが、事業者側の言い分ではないでしょうか。つまり容器包装の軽量化努力に対する成果はしっかり出ていると主張しています。
石川 しかし、ごみ全体の排出量が減っていなければ、成果が出ていないといわれても仕方ないのではないでしょうか。今のやり方では説得力に欠けています。
 ただ、事業者側の負担額を増やせばいいという議論がつきものですが、自治体側の費用が透明になっていない現状では、スタートラインにすら立てません。それがきちんとできたうえで、議論すべきです。
駒谷 リデュースといえば、石川先生は数年前からNPO法人「ごみじゃぱん」を設立されて興味深い取り組みをなさっていますね。
石川 「減装(へらそう)ショッピング」というプロジェクトで、容器包装のリデュースが自然に起こるしくみづくりを“C to B”(*1)で追求するという試みです。
 どんなに環境意識の高い人でも、商品を買う瞬間にその商品や包装がごみになるときのことを考えていないですよね。しかし、店頭でごみに関する情報を知らせれば、生活者は包装の簡易な商品を選択するのではないか。そんな考えを仮説として私たちはこのプロジェクトを企画しました。
 「減装ショッピング」では、神戸大学の学生を中心とした「ごみじゃぱん」のメンバーが神戸市内のスーパーで売られているものの中から、「個別包装なし」「トレイなし」「プラスチックフィルムなし」など8項目の簡易包装の基準で推奨商品を選定し、店頭広告やチラシ、イベントなどさまざまなメディアで生活者に働きかけました。こうした実験を2007(平成19)年から始め、1年目は1店舗で1か月、2年目は4店舗で3か月と、年を追うごとに規模を拡大し、3年目の昨年11月からは神戸市内3店舗のスーパーで1年間にわたって実施しているところです。
駒谷 実績は、いかがですか。
石川 2008(平成20)年には、POSデータの統計的分析によって、食品で8.52%、生活雑貨では14.4%の販売数増加効果が実証され、事業者にとって真剣に検討する価値があることが明らかとなりました。
駒谷 それはすごい成果ですね。情報発信を「ごみじゃぱん」が担うということですね。法規制などに頼らずリデュースを推進できるという点で、まさに「自主的アプローチ」ですね。
石川 そうです。生活者は反応しているのです。「行動が意識を変える」のです。今後は、この取り組みを全国に広げていくことが目標です。減装商品を消費者が購入することで、メーカーも包装の簡易化を図り、それが全国に広がれば、日本全体として減量化が進み、CO2も削減できます。
駒谷 これこそまさしく言い古された言葉でいうと“コンシューマー・ドリブン”(消費者主導)ということですね。結局、企業は売れないものはつくれないし、消費者の購買行動が変わらないと社会は変わっていかない、ということでしょうか。
リデュースこそこれから実現すべき最大の課題
駒谷 協会に対しては、要望も含めてどんな点に期待されていますか。
石川 協会の立場というものが、自治体、市民、学識経験者に理解されていないと思います。運営上の難しさに対する理解を求めるべきです。
 そして、ごみ問題の抜本的な解決にとって、やはりいちばん重要なのはリデュースの推進です。「発生抑制」に関する研究が必要だということです。そこで協会に期待したいのは、例えば、「ごみじゃぱん」を含めてリデュースの推進を目的としているNPO法人やプロジェクトに対する支援もお願いしたいところです。
駒谷 ごみの発生をいかに抑制するかは、確かにこれからの容器包装リサイクルにとっての課題です。ただ、その取り組み主体が誰なのか・・・。現在の法律における指定法人である協会が直接担うということは難しいですね。
石川 前回の改正で、「リサイクル法」から既に「3R法」になったわけですから、リデュースの推進という観点から、いっそのこと「3R協会」という名称の方が、これからの協会にふさわしいかもしれませんね。
駒谷 石川先生が、これまでも、そして本日も強調された「自主的アプローチ」、即ち、強制されることなく、自然に楽しく取り組めるようなしくみが、今後ますます重要になってきますね。本日はありがとうございました。
用語説明 *1:“C to B”
“B to B”は“Business to Business”の略であり、“Business”=企業活動する者同士の取引、すなわち企業間商取引を意味し、“B to C”は“Business to Consumer”の略で、企業から消費者へ=通常の商品提供などを意味する。これに対し、“C to B”は“Consumer to Business”で、消費者から企業へ、という流れを示す。
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編集・発行/(財)日本容器包装リサイクル協会